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【凍結融解胚移植】凍結融解胚移植とは?
凍結胚を融解し、子宮やホルモンバランスを整えた周期に移植する方法です。

採卵した周期に胚移植をすることを新鮮胚移植といい、胚を一旦凍結して子宮やホルモン環境を整えた周期に胚を移植する方法を凍結融解胚移植といいます。
移植する胚は多胎防止のため原則1個で、複数の移植可能な胚がある場合は、凍結して次回の胚移植に備えます。
また、卵巣が腫れ、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の重症化が心配される場合や、採卵周期には子宮が移植、 着床に適していない環境だと判断される場合には新鮮胚移植を見送り、すべての胚を凍結することがあります。
最近は、胚の凍結技術や培養環境が向上したことから移植に適した子宮やホルモン環境を整え、胚が着床するタイミングと子宮が胚を受け入れやすくなるタイミングを合わせることが可能になり、 凍結融解胚移植での妊娠率が高くなってきています。このことから、新鮮胚移植ではなく、凍結融解胚移植を積極的に行う治療施設も増えてきました。
胚は、ガラス化保存法で凍結します。
ガラス化保存法は、胚を高濃度の凍結保護剤などで処理しながらマイナス196℃の液体窒素で急速に凍結する方法です。

新鮮胚移植と凍結融解胚移植の妊娠率 年次推移

出典:日本産科婦人科学会2017 ARTデータより 改変

凍結融解胚移植の病院選び

凍結融解胚移植は、基本的には日本産科婦人科学会に登録のある不妊治療専門病院やクリニックで受けることができます。 特定治療支援事業で助成金の申請が可能になるのも、基本的に日本産科婦人科学会に登録のある不妊治療専門病院やクリニックとなります。 病院検索からお住いの都道府県をクリックし、 に●のついている治療施設からピックアップしてみましょう。
凍結した胚は、液体窒素の充満したタンクで、定期的に液体窒素を補充すれば半永久的に胚を保存しておくことができます。また、凍結は胚だけでなく、精子や卵子を保存することもできます。

なぜ胚を凍結するのか?

採卵した周期に胚移植をすることを新鮮胚移植といいます。また、一度凍結して、採卵周期とは別の周期に胚を移植することを凍結融解胚移植といいます。 凍結する胚のステージは、前核期胚(受精が完了したばかりの胚)、初期胚、胚盤胞と、どのステージでも凍結することができます。
胚を凍結する理由は、主に以下の4つです。

  • ①未移植胚を凍結して保存する

    移植する胚は、多胎予防のため原則1個です。そのため、複数の卵子が採取でき、移植可能な胚が複数ある場合の未移植胚は、次回の移植に備え、凍結をして保存します。
    複数の凍結胚があることで、採卵回数を減らすことができます。また、妊娠をした場合、凍結保存を延長し、第二子、第三子へとつながる可能性があります。

  • ②卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の重症化からの回避

    排卵誘発によって卵巣が腫れ、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の重症化が心配される場合には、新鮮胚移植を見送り、胚を凍結します。

  • ③凍結融解胚移植の妊娠率の向上

    採卵周期に子宮が移植、着床に適していない環境だと判断される場合には、新鮮胚移植を見送り、胚を凍結します。 また最近は、胚の凍結技術が上がったことから、積極的に凍結融解胚移植を行う治療施設も増えてきました。 胚を凍結することにより、移植に適したホルモン環境、子宮環境を整え、 胚が着床するタイミングと子宮が胚を受け入れやすくなるタイミングを合わせることが可能になり、凍結融解胚移植での妊娠率が高くなっています。

  • ④移植胚の数を増やす

    体外受精に挑戦中の夫婦のなかで、少しでも若い間に胚を凍結しておきたい人や、子宮筋腫や子宮内膜症などの手術を優先させる人などが一度、また複数回の排卵誘発・採卵手術を行い、胚を凍結保存することもあります。
    移植する胚を確保することで、年齢的、時間的心配を軽減させたり、病気の治療を優先させることができます。

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)とは

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)は、HMGなどの排卵誘発剤のあと、卵胞を成熟させ排卵を誘起させるHCG注射をすることによって卵巣が腫れ発症します。
お腹や胸に水が溜まるなどの症状が起こり、これまで履いていたパンツやスカートなどがきつく感じることで気がつく人もいます。
重症になると、血液が濃くなることから血栓症を始め、さまざまな合併症を引き起こすことがあります。HCG注射の半減期(体内に入った薬が、 代謝や排泄などによって半分に減るまで)は30~32時間で、その後OHSSの症状は軽くなります。 しかし、妊娠成立によって胎盤形成に多量のhCGホルモンが分泌されるため、OHSSの症状が重症化することもあります。 排卵誘発の際、卵巣の腫れは多くのケースで起こりますが、OHSSを発症しないためにHCG注射を必要としないアンタゴニスト法や低刺激法で排卵誘発を第一選択とする治療施設も増えています。

凍結融解胚移植のメリットとデメリット

凍結融解胚移植の最大のメリットは、着床環境を整えることができ、胚のステージと子宮内膜の状態を合わせることができることです。
たとえば、胚移植は受精2日目の胚であれば、受精から2日目の子宮内膜へ移植します。 受精から5日目の胚盤胞であれば、受精から5日目の子宮内膜へ移植します。このように胚と子宮内膜を合わせることが大切です。 胚の成長スピードが遅かった場合、胚移植しても、着床の窓が閉じられてしまっている可能性があり、新鮮胚移植では着床が難しくなります。こうしたズレを凍結融解胚移植では解消することができます。 そのほかでは、OHSS発症と重症化が回避できること、異所性妊娠(子宮外妊娠)の確率が新鮮胚移植より低いことなどがあげられます。
また、凍結胚が複数ある場合、次治療周期が必要となっても、治療周期のスタートを排卵誘発からではなく、胚移植からスタートすることができます。 さらに、新鮮胚移植よりも凍結融解胚移植によって生まれた赤ちゃんのほうが出生体重が重いことが知られています。ただ、これはメリットなのか、デメリットなのかは、まだよくわかっていません。
デメリットとしては、治療期間が長引くこと、ホルモン補充周期を選択した場合は投薬期間が長いことなどがあげられます。 なかでもエストラジオール貼付剤(経皮から卵胞ホルモンを投与)は長期に渡って貼り続けるので、かぶれや痒みを訴える人もいます。かぶれ易い人は、あらかじめ相談するといいでしょう。

新鮮胚移植のメリットは?

新鮮胚では、採卵と同じ周期に移植を行うため、排卵誘発ー採卵ー胚培養ー胚移植ー妊娠判定までの治療期間が短いことと、凍結による胚へのストレスがないことがメリットにあげられます。
デメリットは、排卵誘発をしたことにより着床に適さない環境になる可能性があることです。
たとえば、排卵誘発でクロミフェンを服用した場合、子宮内膜が厚くならないという副作用や、多量の排卵誘発剤の使用によるエストロゲンの高値などは着床に適した環境とはいえず、 新鮮胚移植での妊娠は難しいと判断されることもあります。そのほかでは、移植後に妊娠成立することでOHSSが重症化するケースがあることです。
こうした子宮環境、ホルモン環境などが整えられていない場合は、胚を凍結することで回避できます。
また、凍結融解胚移植よりも新鮮胚移植のほうが異所性妊娠(子宮外妊娠)が多いことが知られています。

凍結融解胚移植の治療周期は?

凍結融解胚移植の治療周期は、3つの方法があります。

  • 自然周期

    自然排卵により排卵日から胚移植日を決定する方法で、月経周期が安定している人に向いています。

  • 排卵誘発周期

    クロミフェンなどの内服の排卵誘発剤を使い、排卵を起こさせて胚移植日を決定する方法です。クロミフェンの服用で子宮内膜が厚くならないという副作用に注意が必要です。

  • ホルモン補充周期

    ホルモン補充を行い、内膜の黄体化を行った日から、胚移植日を決定する方法です。移植日のスケジュールが立てやすいのが特徴です。

これらのどの方法を選択するかは、医師の治療方針や個々の月経周期、治療歴、ライフスタイルなどから決めていきます。
たとえば、診察回数から選択することもできるでしょう。自然周期と排卵誘発周期では2~3回程度、ホルモン補充周期(一例)のスケジュールでは、 移植までの診察回数は子宮内膜の厚さをチェックするための1回のみになる人もいます。 しかし、薬の効果がなかなか見られず、ホルモン検査が数回必要になったり、薬が追加されたりと、人によって、もしくは周期によって診察回数が増えることがあります。 ただ、スケジュールを立てやすく、ある程度は胚移植日に融通が利きます。
また、薬の量や管理から考えることもできます。なかでも薬に気をつけなくてはならないのがホルモン補充周期です。ホルモン補充周期では、薬の飲み忘れ、または薬の張り替えなどを忘れずに行う必要があります。
それぞれの適応対象や特徴などから検討しましょう。

凍結融解胚移植の妊娠率は?

2017年日本産科婦人科学会が発表した凍結初期胚移植の妊娠率の平均は20.1%、凍結胚盤胞移植の妊娠率の平均は 39.3%でした。
新鮮初期胚移植の妊娠率の平均は19.8%、新鮮胚盤胞移植の妊娠率の平均は 29.5%で新鮮胚移植と比べると妊娠率は高くなりますが、年齢が高くなればなるほど妊娠が難しくなります。
ただ、この結果から胚盤胞による凍結融解胚移植を行うことで妊娠の期待が高まることがわかります。

凍結融解胚移植と新鮮胚移植の年齢別妊娠率

出典:日本産科婦人科学会2017 ARTデータより 改変

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