◆からだのことを知ろう
●子宮
子宮は全長約7,5cm、最大幅約4,3cm、厚さ約2,5cmの西洋なしのような形をしています。全体が厚い筋肉でできていて、内側にはスプーン1杯分くらいの小さなすき間があいています。子宮の筋肉の内側を内膜、外側を子宮外膜といいます。内膜はホルモンの影響を受けて厚くなり、排卵直前には3〜4mmに、着床する頃には7〜8mmにまで肥厚します。妊娠しなければ、内膜は剥がれ落ちて膣から体外に捨てられます。
これが月経です。このときの血液の量はコップに半分弱ほどといわれています。
子宮は膣によって外界とつながっています。
●卵巣
卵巣は左右に1対あり、長径が約3〜4cmほどのやや平たい楕円形をしています。成熟卵を周期的に排出する(排卵)役目と卵胞ホルモンと黄体ホルモンという2つのホルモンの合成と分泌を行ないます。
●卵管
卵管は子宮の左右に1対あり、長さは10〜15Bで、一番狭いところの直径は1mm以下という細い管です。子宮のつけねから両側に少し太くなっっていき、その先端はラッパのような形をして開いています。ここを卵管采といい、卵巣から排卵した卵子を受け取る役目を持っています。卵管の内側にある線毛の動きと、卵管自体のぜん動運動によって、受精卵は子宮に運ばれます。
●月経周期はホルモンによってコントロールされています
卵巣では一定の周期で卵が成熟し、排卵をしますが、周期をコントロールしているのが脳の中の視床下部と下垂体というところです。ここから分泌されるホルモンが血流にのって卵巣を刺激し、卵の成熟と排卵を促すのです。一方、卵巣からもホルモンを分泌し、視床下部と下垂体に情報を送っています。このホルモンによるやりとりによって排卵から月経という一連のサイクルを起こしているのです。
●視床下部
視床下部は間脳というところにあり、自律神経系やホルモン系の働きを司るとともに、体温、睡眠、性機能などの中枢としての役割を担っています。
●下垂体
下垂体は脳の一番底の方にぶらさがっている器官で、小指ほどの大きさです。成長ホルモンや副腎皮質刺激ホルモンなど8つのホルモンをコントロールしているホルモンのセンターです。
●LHサージと排卵
GnRH(=LH-RH)は卵胞が発育するにしたがい、たくさん分泌されるようになります。卵胞が十分に発達し、卵胞ホルモンの血中濃度がある高さ以上になると、堰を切ったように大量の黄体化ホルモン(LH)が下垂体から放出されます。これをLHサージといいます。サージ(surg)とは大波、うねりのことをいいます。
LHサージの開始後、約36時間後に排卵が起こります。
●頸管粘液の分泌
頸管粘液の分泌を促すのが卵胞ホルモンです。排卵が近くなると頸管粘液の分泌が増えますが、それは卵胞ホルモンが多量に分泌されるためです。
◆妊娠のメカニズム
28日の周期で、卵巣の中にある卵胞が成熟して排卵します。排卵された卵子と精子が限られた時間内に出会て受精すると、2つの細胞が合体して受精卵になります。受精卵は分割を繰り返して、しだいにその細胞の数を増やしながら、卵管の中を移動し、やがて子宮にたどり着きます。子宮の内膜はこのころ十分に厚みを増して、受精卵を待っています。受精卵がこの子宮内膜に着地すると、子宮内膜を溶かしながら潜り込んでいき着床します。これらのステップが滞りなく進行してはじめて妊娠が成立するのです。
◆不妊症の原因と治療
●排卵障害
・精神的なストレス
排卵障害を起こす原因にはさまざまなことが考えられます。
一つには視床下部の不調があげられます。精神的なストレスなどもその原因となります。身内の不幸や人間関係の悩みなどが引き金になり、視床下部の働きに不調をきたし、下垂体への命令を一時的にストップさせてしまうことがあるのです。そのため、一時的に排卵が止まってしまいます。そのほか、睡眠不足、過激なダイエット、肥満なども排卵を止めてしまうことがあるので、注意が必要です。
・下垂体腫瘍
ごくまれですが下垂体に腫瘍ができて、性腺刺激ホルモンの分泌を邪魔することがあります。腫瘍を取り除けば、ホルモンが再び分泌され、排卵が起こります。
・高プロラクチン血症
授乳を促すホルモンであるプロラクチンの分泌が増えてしまうため、排卵を止めてしまうものです。排卵障害の原因の約20%を占めるといわれています。
治療はプロラクチンの分泌を抑制するブロモクリプチン療法があり、パーロデルやテルロンとよばれる錠剤を内服します。
ただし、これらの薬は悪心や下痢、めまい、頭痛、疲労感などが起きやすいため、朝夕1錠ずつ内服するところを、最初は就寝前に半錠を服用して、様子を見ながら増やしていくという場合もあります。
・黄体化非破裂卵胞(LUF)
卵子が卵巣内で十分発育するにも関わらず、排卵しないというケースです。基礎体温では高温相を示すので排卵していると診断されやすく、超音波で卵巣のようすを観察してはじめて、みつかる場合が多いのです。
治療法はhCGを再投与する方法、膣を通して卵胞を刺激する方法などがありますが、LUFを繰り返す場合は体外受精を行うのが早道です。
・卵巣嚢腫
卵巣嚢腫は卵巣が腫れて袋状になり、そのなかに液体や粘液などがたまります。卵巣嚢腫はその内容物によって、漿液性嚢腫、粘液性嚢腫、皮様嚢腫、チョコレート嚢腫があります。無色透明の液体がたまった漿液性卵巣嚢腫がもっとも一般的で全体の半分以上を占めます。若い女性に多く発生し、良性の場合がほとんどです。
チョコレート嚢腫は子宮内膜症による嚢腫で、古い血液がたまり、チョコレート状にどろどろしているものをいいます。悪性ではありませんが、周囲組織と癒着して、下腹部痛や腰痛、月経痛などが強く現れて辛い症状を伴います。
卵巣嚢腫は、現在、薬で治療する方法はなく、手術によるものが一般的です。
・子宮内膜症
月経は膣を通して体外に排出されますが、その出血とともに剥がれた子宮内膜が、卵管を通って腹腔内へ入り、卵巣や卵管、直腸などに付着して、そこで生育して増殖する場合を子宮内膜症といいます。子宮内膜は卵胞ホルモンによって増殖しますが、子宮内膜症の組織も同様に毎月の月経周期で増殖し出血するので、腹痛や腰痛を伴い、卵管などに癒着も引き起こします。
重症の子宮内膜症では、卵巣にチョコレート嚢腫ができたり、卵巣や卵管の周囲が癒着し、排卵も抑制されてしまうことも少なくありません。
治療法には卵胞ホルモンと黄体ホルモンによって、一時的に月経を止める偽妊娠療法や男性ホルモンを内服する偽閉経療法などがあります。ホルモン療法にもう一つ、GnRHanalog療法があります。
GnRHanalog
(商品名はブセレリン)によって下垂体ホルモンの分泌を抑制させ、卵胞ホルモンの分泌を抑えて、内膜症の増殖を抑えようというものです。鼻腔に噴霧するほか、皮下注射(薬品名リュープリン)によるGnRHa注射療法もあります。
ホルモン療法は根治療法ではなく、あくまでも飛び火した内膜の増殖を抑制するものです。
●多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
卵巣表面を覆っている白膜が厚く硬くなるため排卵が起こりにくくなり、月経異常(希発月経や無月経)や月経はあるのに排卵はしない無排卵周期症、あるいは不正出血を起こします。
薬による治療法では、クロミフェンの内服、hMGの注射による排卵誘発法があります。hMGは強力な卵胞刺激製剤であるため、排卵誘発する効果も高いのですが、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群になりやすく、重症になる割合も多いのでとくに注意が必要です。
手術で厚くなった卵巣の被膜をくさび状に切除し、卵巣を正常な大きさに近づけます。腹腔鏡による手術も可能です。手術によってよく成熟した卵が排卵されるようになりますが、削り取った卵巣はしだいに修復され、1年くらいで元の状態に戻ります。手術を受けたら、なるべく早く妊娠することが望まれます。
●卵管障害
卵管内部は細かいひだや繊毛がびっしりと生えていて、受精卵に栄養分を補給しながら、子宮へと運びます。卵管に炎症があって詰まったり、その機能がうまく働かない場合は妊娠できません。卵管障害による不妊症は多く、女性側の原因の30%にものぼるといわれています。
卵管に炎症を起こすのは淋菌、ブドウ球菌、連鎖球菌、大腸菌などで、抗生剤によって炎症は治まりが、そのあとに癒着が起こると卵管閉塞などの後遺症を残してしまうのです。
卵管の先端の卵管采では卵巣から飛び出した卵子をキャッチし、卵管に取り込む働きがありますが、ここに癒着などがあると卵子をうまく捉えることができず、妊娠できません。これをピックアップ障害といいます。
子宮卵管造影検査など卵管の疎通性を調べる検査は治療効果もあり、検査のあとに妊娠する人も少なくありません。
また、両方の卵管が閉塞している場合には体外受精の適応となります。
●着床障害(子宮の病気や異常による不妊症)
・黄体機能不全
子宮内膜は受精卵の着床時期にもっとも厚く、また、着床しやすいような性質をおびてきます。そのように内膜が十分に肥厚しないと、着床不全を起こしたり、着床しても育たずに妊娠初期の流産を引き起こします。ホルモンの乱れからくる着床障害の代表的な症例に黄体機能不全があります。基礎体温では高温期が短くなったり、低温期と高温期の温度差が少なくなります。
卵巣から分泌される黄体ホルモンが十分でない場合と、黄体ホルモンは十分分泌されていても、子宮内膜が反応しない場合とがあります。
黄体機能不全症の治療法は、黄体ホルモンの補充療法があります。黄体ホルモンを基礎体温が上昇した後に内服し、内膜を肥厚させます。
また、排卵期と黄体期にhCGを投与して、黄体の形成と維持を図る黄体刺激療法があります。
卵胞の発育、排卵が正常に起これば、黄体機能も十分に働くので、卵胞の成熟を促す方法もあります。クロミフェンやhMGの投与はそうした治療の一つです。
・子宮筋腫
子宮の筋肉がこぶのようになって発達する良性の腫瘍です。筋腫は35歳以上の女性の2割にあるといわれ、珍しくはありませんが、不妊や流産の原因となることもあるので、必要ならばその筋腫だけを取り出す筋腫摘出手術を行って妊娠のための条件をよくします。
・子宮腺筋症
子宮腺筋症は子宮内膜症の一種で、内膜組織が子宮筋層内に増殖する場合をいいます。子宮全体が大きく硬くなるのが特徴です。腺筋症の組織は、その周囲の組織とはっきり区別できないため、筋腫のようにそれだけ摘出するということは難しくなります。
・子宮奇形
先天的に子宮の形の異常がある場合で、重複子宮、双角(単頸、双頸)子宮、弓状子宮、単頸単角子宮、中隔子宮、不全中隔子宮などがあります。
なかなか妊娠しない場合や、妊娠しても流産してしまうといったときに検査をして初めてみつかるというケースがほとんどです。
手術をして子宮の形を整える場合もあります。
●免疫性不妊
女性の側が、自分にとっては異質な細胞である精子を排除しようとして免疫機能が働き、不妊に結びつく場合があります。これを免疫性不妊といいます。
異物のことを「抗原」、この抗原を排除するための武器となるのを「抗体」といいますが、免疫性不妊の場合は精子を抗原とみなして抗精子抗体ができてしまうのです。抗精子抗体を男性自身が持っている場合もあります。
夫婦どちらかが抗精子抗体を持っていると、子宮頸管での精子の通過性が悪く、フーナーテストの成績が悪くなります。
治療法としては、コンドームの使用で3〜6カ月間、夫の精液との接触を断ち、女性の側に抗体をつくらせないようにする方法のほか、人工授精、体外受精があります。
●機能性不妊
夫婦ともに検査をしてもとくに異常がみつからない場合を機能性不妊といいます。「器質的疾患の機能的異常のみ認められる不妊症」という意味です。
機能性不妊は意外に多く、不妊カップルの10〜30%を占めるともいわれていますが、最近は腹腔鏡検査によって障害を発見するケース、あるいは体外受精によって妊娠するケースも増えています。
●習慣流産(不育症)
妊娠はするのですが、流産を繰り返し生児が得られない場合を習慣性流産、または不育症ともいいます。
流産を2回繰り返した場合を反復流産、連続して3回以上の場合は習慣流産といいます。卵子や精子の染色体異常のほか、子宮の異常(子宮奇形、子宮筋腫)なども原因になります。黄体機能不全も子宮内膜の発育不全を招き、初期流産を繰り返します。子宮内膜検査や黄体機能不全など内分泌異常と診断された場合は、黄体ホルモン補充療法としてプロゲステロンやデパストンを投与します。また、hCG製剤により卵巣黄体を刺激し、プロゲステロンの分泌を促進する方法もあります。
後期流産および早産を繰り返す原因には頸管無力症がよく知られています。子宮頸部が非常に柔らかいために流産しやすく、この場合は子宮口を縛る頸管縫縮術という手術を行います。
自己免疫疾患が反復流産の原因になる場合もあります。反復流産に関係するのは、抗リン脂質抗体で、血小板や血管壁に作用し血栓をつくる原因となります。その結果、流産を繰り返すと考えられています。
抗リン脂質抗体陽性の患者さんに対しては、妊娠とわかった直後に低用量のアスピリンと治用量ヘパリン療法を行います。また、ステロイドホルモンを用いるという方法もあります。
これまで原因がわからなかった習慣流産患者のなかに、夫婦間の免疫学的異常が原因となっていることが多いことがわかってきました。習慣流産の夫婦においてヒト白血球抗原(HLA)が類似している場合には、夫のリンパ球を母体に感作させるリンパ球輸血という治療法があります。この方法はご主人のリンパ球を通常2〜3回、皮下に摂取し、リンパ球を摂取した部位の反応が1cm以下になるまで2週間おきに行います。妊娠後にさらにもう1回します。
◆治療のステップ
・タイミング法
排卵日を正確に予測し、その日にセックスをするように指導するだけで、半数のカップルが妊娠するといわれています。
卵胞の大きさを超音波でモニターすることで排卵日の予測がかなり正確にできるようになりました。
排卵する前にはLHサージといって、排卵を促すホルモンである黄体化ホルモン(LH)の分泌が急激に上昇します。LHサージが始まると、約36時間後に排卵が起こるので、LHの分泌をチェックすることで排卵を予測することができます。
また、頸管粘液が増えてくると排卵日が近いサインです。この時期は下腹が張って便秘がちになる人や排卵痛を起こす人もいます。これを目安に排卵日を予測することもできます。
・薬によって排卵を誘発
・飲み薬による治療(クエン酸クロミフェン)
クエン酸クロミフェン(商品名はクロミッド)は弱いエストロゲン(卵胞ホルモン)剤で、視床下部に働いて、GnRHの分泌を亢進します。その命令を受けた脳下垂体ではFSH、LHを分泌し卵巣を刺激、卵胞の発育と排卵を誘発します。
月経周期の5日目から毎日1〜3錠5日間内服すると、約2週間後に排卵が起こります。
・注射による排卵誘発(hMG-hCG療法)
クロミフェンが間接的に卵巣に働きかけるのに比べて、こちらは直接卵巣を刺激するのでその作用も強くなりす。
卵子を成熟させるFSH(卵胞刺激ホルモン)と排卵を促し黄体の形成を進めるLH(黄体化ホルモン)とを、注射によって投与し、排卵を起こさせます。
hMGは閉経後の女性の尿から抽出したFSHです。商品名はヒュメゴン、フェルティノーム、パーゴナルなどがあります。
hCGはヒトの胎盤の絨毛から採取されたものです。
hMGを1〜2週間毎日(または隔日)注射をし、両方の卵巣に成熟卵胞をたくさんつくります。経膣超音波で卵胞の大きさをモニターし、十分成熟した時点でhCGの注射を打って、排卵を起こさせます。
・副作用にも気をつけよう──卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
hCG-hMG治療の副作用として、卵巣の肥大や腹水がたまる場合があります。これを卵巣過剰刺激症候群(OHSS)といって、hMGによって卵胞が10個以上育ちすぎた場合に起こりやすく、多嚢胞性卵巣症候群(PCO)など卵胞がたくさん育つ体質の人に多く見られます。
クロミッドなどの内服する錠剤では副作用はほとんど起きません。
卵巣のまわりに腹水がたまり、下腹部が膨れ、重症になると胸水がたまって呼吸が苦しくなることもあります。血管内の水分が失われるため、血液がどろどろになり血栓もできやすくなるので、それが脳に詰まると脳血栓を起こし、非常に危険です。生死にかかわる事態に至ることもあるので、注射による排卵誘発の際に体調の変化に気づいたら、すぐに病院に連絡を取りましょう。
●人工授精
精液を男性のマスターベーションによって採取し、子宮腔内に注入します。
夫の精液を用いる配偶者間人工授精(AIH)と、夫以外の精液を用いる非配偶者間人工授精(AID)とがあります。
超音波診断法などによって排卵直前の時期を判断して行います。
精液採取後、2時間以内の新鮮なものを使用し、良好精子選別して、濃度を高めて行う方法が一般的です。
妊娠率は平均3割前後といわれています。不妊期間が長いほど妊娠率は低下し、また、精子の濃度や運動率が低い場合は妊娠率は悪くなります。
元気のよい精子の濃度を高める方法には精子洗浄濃縮法(パーコール法)と精液静置法(スイムアップ法)があります。
・精子洗浄濃縮法(パーコール法)
パーコールという液体とともに遠心分離器にかけて洗浄濃縮をし、沈殿した優良精子のみで精液をつくり、濃度、運動率ともに改善を図る。
・精液静置法(スイムアップ法)
培養液の下に精液を静かに置いて、時間の経過とともに培養液中に浮遊してくる運動良好な精子を集める。
●体外受精-胚移植(IVF・ET)
卵と精子を体外に取り出し受精をさせ、その受精卵を子宮の中に戻す方法が体外受精です。
卵管障害の患者さんをはじめ男性不妊から免疫性不妊、原因不明不妊まで、その適応範囲は広がっています。夫婦の精子と卵子が受精ができるかを体外受精によって確かめることもできす。
・体外受精の方法
排卵誘発剤によって、通常周期よりもたくさんの卵胞を発育させ、排卵直前に採卵します。
採卵と同時に男性側の精液も採取し、精子液を調整しておきます。卵子、精子とを一定時間培養して成熟させた卵子と精子をシャーレの中で混ぜ合わせて受精させます。受精を確認したあとも、さらに培養を継続して受精卵の分割を進行させます。4細胞期胚にまで発生した時点で子宮内に移植します。
・排卵をコントロールする
クロミフェンやhMGによる排卵誘発剤によって、よい卵を複数個育てます。
その際、スプレキュアhMG-hCG法が用いられるのが一般的です。
スプレキュア点鼻薬(LH-RHアナログ製剤)を鼻の中に吹き付け、本来の生理的なホルモンの働きを一時的にストップさせます。そのうえでhMGで卵胞を成熟させ、hCGの注射して排卵を促すのです。
最大卵胞経が18〜20mmにまで発育した時点でhCGを投与します。
hCG投与から34〜36時間後に採卵を行います。経膣法といって専用に設計されたプローブを膣内に挿入し、モニターで卵胞を見ながら採卵します。局所麻酔で行われるのが普通です。
・胚移植の方法
移植の際は、胚移植用のカテーテルを用いて、胚を少量の培養液とともに子宮内腔へ注入します。受精卵は子宮に戻す数が多いほど、着床率も高まりますが、それも4個までで、それ以上はあまりかわりません。
1回に移植する胚の数が増えると、多胎妊娠の発生率も上昇するので、1回の移植で4個までとしているところが一般的です。
・妊娠率
1回の胚移植当たりの妊娠率には施設によって5〜30%弱までと差があります。体外受精をしたからといって100%妊娠するとは限らず、むしろ3割前後であるということを念頭において、何回かチェレンジする心構えでのぞむとよいでしょう。
●配偶子卵管内移植法(GIFT)
GIFTでは体外に取り出した卵子を精子とともに、卵管内に移植する方法です。受精から着床に至る過程は自然妊娠の場合と変わらないため、体外受精に比べてより自然妊娠に近いといえます。受精卵の培養などの高度の技術も必要としないという利点もあります。 この方法を受ける場合は少なくとも一方の卵管が機能していることが条件です。
ただ、採卵は腹腔鏡採卵が一般的で、卵子と精子の卵管内移植も、引き続き、腹腔鏡下で行われます。
体外受精に比べて、腹腔鏡手術の際に全身麻酔をすること、受精卵を確認できないなどに難点があります。
●体外受精卵卵管内移植(ZIFT)
体外受精卵卵管内移植(ZIFT)は、体外受精によってできた受精卵を卵管内に戻します。受精が確かめられるというメリットがあります。
採卵から受精までは体外受精と同じ方法で行なわれ、精子と卵子をいっしょにしてから18時間後に、卵管内に移植します。
●顕微受精
顕微授精は顕微鏡を見ながら、卵子に精子を直接注入、できた受精卵を子宮に戻すという方法です。
精子減少症をはじめ、高度の乏精子症など重症男性不妊に適用されます。そのほか精子無力症、精子奇形症、不動精子のほか、精子の透明体・卵細胞膜貫通障害、抗精子抗体陽性の場合に適用となります。
射精液中に精子が発見できない場合でも、精子上体、あるいは精巣内の精子を採取して受精させる方法もあります。それぞれ精巣上体精子採取法(MESA)、精巣精子採取法(TESE)といいます。
精子を卵細胞そのものの中に直接注入するのが卵細胞質内注入法(ICSI)で、現在はこの方法が広く用いられています。
そのほか、透明帯と卵細胞との間に精子を注入する囲卵腔内精子注入法(SUZI)、透明帯に穴をあけて精子が自然に卵の中に入るようにした透明層drilling法(ZD)などがあります。
●胚の凍結保存
IVF・ETやGIFTでは過排卵を起こさせるので、1回の採卵手術で数個から10個以上の卵子が得られますが、実際に移植するのは多胎を防ぐため3〜4個までに限っています。
残った受精卵を凍結保存しておくことで、次回以降の自然周期に融解して移植することができます。
凍結卵を使えば、採卵の負担がなく、胚移植ができます。自然周期に移植する方がホルモン環境もよく、子宮内膜の状態もよいので、妊娠率が高められると考えられています。
ただ、凍結保存された受精卵や未受精卵は半永久的に保存できるため、世代の混乱を招くなどの問題が起きる可能性があります。また、夫婦の離婚や死別などの場合にも、その際、受精卵をどうするかなどあらかじめ決めておくことも必要でしょう。