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不妊治療における【先進医療】種類や内容、助成金について

不妊治療における先進医療とは?

不妊治療における先進医療とは、厚生労働大臣が承認した高い医療技術のこと。
ただし、先進医療は、将来的に保険適用が検討されているものの、まだエビデンスが不十分である場合などに該当します。
逆にすでに有効性や安全性が国に認められている不妊治療に関しては、2024年の4月から不妊治療が保険診療となっています。

先進医療はAとBに分類されます。

A将来的に保険医療に移行される可能性が高いもの
BAよりもさらに有効性と安全性の評価のための臨床研究が必要とされるもの

先進医療は保険適応範囲の技術ではありませんが、保険診療と共に使用できる場合があり、医師からの提案や施設の体制などによって取り入れられることがあります。

不妊治療における先進医療と保険事情について

上述でもお伝えした通り、先進医療は保険適応ではありません。
ただし、保険適応の治療と併用して取り入れられる場合があります。
不妊治療における先進医療は、保険医療機関が実施する項目ごとに厚生労働省へ申請し、認定を受けなければなりません。
認定を受けている医療機関で、保険診療と併用して先進医療を受ける場合、保険診療は3割負担で受けることができます(①)。でも、医療機関が先進医療に対して厚生労働省の認定を受けていなければ、保険診療と併用することができないのです(②)。

厚生労働省の認定保険診療と併用
医療機関①あり
医療機関②なし不可

不妊治療における先進医療の種類

現在(2024年2月時点)で厚生労働省から認められている不妊治療における先進医療は13種類あります。

目的区分種類(名称)
受精IMSI
PICSI
精子選別マイクロ流体技術を用いた精子選別
胚培養タイムラプス
着床環境子宮内膜受容能検査
(ERA)
子宮内膜受容期検査
(ERPeak)
子宮内細菌叢検査
(EMMA/ALICE)
子宮内フローラ
子宮内膜スクラッチ
胚移植SEET法
二段階胚移植
反復着床不全反復着床不全に対する投薬
(タクロリムス)
着床前胚着床前胚異数性検査
(PGT-A)

IMSI

IMSIとはICSI(顕微授精)の方法のひとつです。強拡大顕微鏡を使って形態良好な精子の選別をします。IMSIに使われる顕微鏡は通常の1000倍以上(最大6000倍)の高倍率で精子を確認することができます。精子のDNAに傷があると、授精や胚発育に影響を及ぼして流産率が上がってしまうと言われているため、IMSIで良好な精子を選ぶ選択がされる場合があるのです。

PICSI

PICSIとはヒアルロン酸が含まれた培養液を用いて、成熟した精子を選択する技術のことです。成熟した精子にはヒアルロン酸とくっつくことができるレセプターが発現します。つまり、成熟している精子はヒアルロン酸とくっつき、未成熟のものはくっつかないため、成熟した精子を選択できると考えられています。

マイクロ流体技術を用いた精子選別

マイクロ流体技術を用いた精子選別はマイクロ流体技術を用いてDNAの傷が少ない精子を改修する方法をいいます。遠心分離機を使用しないため、遠心時にDNA傷ついたり、ちぎれてしまったりする心配なく精子を回収することが期待されています。

タイムラプス

タイムラプスとは培養器に内蔵されたカメラによって、胚培養中の胚を一定間隔で自動撮影し、培養器から取り出すことなく、観察、評価、培養ができる技術のこと。タイムラプスインキュベーターを用いておこなわれ、連続撮影が可能なため、動画を見るように観察することができる。

子宮内膜受容能検査(ERA)

子宮内膜を採取し、次世代シークエンサー(塩基配列を解読する装置)を用いて遺伝子の発現を解析し、内膜組織が着床に適した状態であるのかを評価する検査のことです。子宮内膜の着床できるタイミングと移植のタイミングをより合わせやすくするためにおこなわれます。

子宮内膜受容期検査(ERPeak)

子宮内膜を採取し、RT-qPCR(遺伝子の発現レベルと解析する装置)を用いて遺伝子の発現を解析し、内膜組織が着床に適した状態であるのかを評価する検査のことです。ERA同様、より良いタイミングを探るために用いられます。

子宮内細菌叢検査(EMMA/ALICE)

EMMA(子宮内マイクロバイオーム)検査は、子宮内の乳酸菌の種類と量を調べ、子宮の細菌環境が胚移植に適した環境かどうか調べる検査です。ALICE(感染症慢性子宮炎)検査は、子宮内の細菌の中で特に慢性子宮内膜炎の原因となる細菌の検出をします。

子宮内フローラ

膣や子宮内に存在するさまざまな種類の細菌を検査する、子宮内フローラ検査。善玉菌が減ったり、細菌のバランスが崩れると着床や妊娠率が低下したり、流産や早産率が高くなったりする可能性があることから、善玉菌とラクトバチルス属菌の割合を検査します。

子宮内膜スクラッチ

子宮内膜スクラッチは、原因のよくわからない着床不全に対して、局所的に小さな擦り傷をつける治療です。子宮内膜にできた傷を修復するために分泌されるさまざまな成長因子が子宮環境を整え、着床しやすくなるとされています。

SEET法

胚培養液を胚移植数日前に子宮に注入し、受精卵の着床に適した環境を作り出す技術です。通常、胚は成長しながら子宮に向けてシグナルを送り、シグナルを受け取った子宮は胚を受け入れる準備をします。でも、体外授精における胚盤胞移植ではこのシグナルが分泌されないため、胚盤胞移植の2-3日目前に培養液を子宮腔内に注入します。

二段階胚移植

胚移植周期内に授精から2日目、または3日目に初期胚1個を移植し、次に授精から5日目に胚盤胞1個を移植する方法です。着床のためには胚と子宮の相互作用が必要だと考えられていますが、胚移植ではそれがない状態で胚を移植しなければなりません。そのため、最初に初期胚を移植して相互作用を促した上で、新な胚盤胞を移植するのです。

反復着床不全に対する投薬(タクロリムス)

免疫抑制剤であるタクロリムスを投与し、胚移植することで妊娠を目指す方法です。胚移植をおこなった際、母体が胚を異物として攻撃してしまい着床しないケースなどに用いられます。

着床前胚異数性検査(PGT-A)

体外受精によって得られた胚盤胞の染色体数を胚移植前に調べる検査です。体外授精-胚移植が繰り返し不成功だったり、流産を繰り返したことがあったり、いずれかに染色体構造異常が確認された場合に用いられるケースがあります。

『i-wish ママになりたい vol.71』では不妊治療における先進医療について、それぞれ詳しく解説しているほか、「どんな場合に用いられるのか」「どんな方法でおこなわれるのか」「参考費用」など、さらに詳しい情報を特集しています。気になる方は、ぜひチェックしてみてください。

不妊治療における先進医療に対する助成金について

不妊治療における先進医療の助成金は自治体によって異なります。編集部では不妊治療に関する助成事業について、47都道府県を独自リサーチしました。全国1,718の市区町村の中で、多くの自治体がさまざまな特色の助成事業をおこなっているようです。

例えば東京都の場合、保険医療機関にておこなった不妊検査および一般不妊治療にかかる費用の助成は夫婦1組につき1回限り。先進医療は、保険診療(体外受精・顕微鏡授精)と併せて実施した場合に1回の治療につき、自己負担額の7割まで、上限は15万円まで(助成回数は保険診療に準ずる)となっています。

下記のページでは先進医療も含む助成について、独自リサーチをおこなった結果をまとめています。併せてご参照ください。 https://www.funin.info/subsidy/