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取材記事

適齢期での妊娠〜出産

公開日: 2017-06-23

卵子の質に関しては年齢が大きく関係しているので、
適齢期での妊娠〜出産が推進されるよう願っています。

 考えてみると、女性はいつからこれほど妊娠適齢期を過ぎてからでも子どもを欲するようになったのでしょう?
 女性の社会進出が進み、ライフスタイルの選択肢が増えたからと言っても、妊娠適齢期は延びてはくれません。昔であれば、10代で女性は結婚し、30代で子づくりは終えていたことでしょう。それが本来の人のあり方だと振り返ってみることも、今の社会には必要かもしれません。
 厳しい現実への思いを胸に、杉山産婦人科・杉山力一医師にお話を伺いました。

 

「卵子の質が悪い」と患者さんに伝える機会は増えていますか?

 増えていますね。その機会が増えるのは、患者さんの年齢が高くなっていることが影響しているため、仕方のないことです。一通りの検査をして他に原因がなく、体外受精をして結果がでなければ、やはり『卵子の質が悪い』と言うしかありません。
 それが、患者さんの年齢が若ければ事情は違ってきます。20代から30代前半までであれば、卵子の質はまだ良いですから、治療での結果もでやすいのです。
 このことはとても重要なことだと考えています。そして、勉強会でもよく話すのですが、『35歳を過ぎ、40歳で子どもを考えるは遅すぎますよ』と。もちろん、会場には40歳前後の方が多くいらっしゃいます。その前でもはっきり話しています。優しい言い方でやんわりとですが、子どもを考えるのに35歳を過ぎたら遅過ぎますよ!と。
 考えてみて下さい。女性の身体にとって、子どもを産む適齢期というのは、もっともっと若いはずです。10代で生理がはじまり、昔で言えば15歳で子どもを産み、30代で子づくりは終えていたのです。今の時代、女性は大学にも進学して、社会人となって働き、そうでなくても生き方の選択が広がっていて、30歳を過ぎ、40歳でも子づくりを考えているのです。生理が始まって、20年間もの間、いい卵が消えていくのです。寿命は80歳を超えるまで伸びていますが、卵子の数も寿命も昔と変わりませんから、自分の年齢以上に卵子は衰えるのが早いというサイクルになってきているのです。
 そのことに早く気付いて修正していくことが一番大切なことだと思います。「さあ、これから先どうしよう」と国や社会が考えないといけないのではないでしょうか。そのためには、学校教育などでしっかり現状を伝えることも大事かと思います。

 本当ですよね。それは私ども編集の主旨でもあるのですが、なかなか年齢と女性のカラダと卵の関係を考えると現実はきびしいことになっています。そこでi・wishママになりたいでも警鐘を鳴らす意味で『40歳からの不妊治療』を特集し、現状を伝えることもしてきました。
 しかし、知識はみなさんお持ちでしょうから、治療の時にも理解していらっしゃるのではないでしょうか?

 それは半々ぐらいですね。よく知っていて、初診でもこちらからの説明をすることなく、自分たちの状況から、治療をするなら体外受精が一番確実だと希望する方と、やはり初診で説明をして、そこから治療スケジュールを考えていく方に分かれます。あらかじめ勉強会をしているので、知識を得ている方の中にはそこでの効果もあるのでしょう。
 それでも40歳を超えれば結果は厳しいことに違いはありません。いい卵子に出会うことを期待して治療周期を診ていくことで、それでも1割から3割くらいは妊娠されます。年齢に関係なく、患者さん全体では体外受精で5割くらいは妊娠されますが、年齢が高い方は半年1年勝負です。全体では3回までの治療で妊娠される方が多く、それ以外は、回数を重ねても良い結果が出ることは少なくなっていきます。
 やはり若い方は結果も早いですね。

 

先生のところは腹腔鏡での成果も大きいと聞きますが?

 原因を診ていくと、腹腔鏡での対応もありますから、その場合は、丸の内のクリニックで手術を行い、手術の後で体外受精に頼らず、多くの方が妊娠されています。3割ぐらいの方(夫婦)は術後に自分たちの力で結果を出されています。年間では800件程の腹腔鏡を行っていますから、250名程が妊娠し、そうでない方は、その後に体外受精で妊娠される方もいます。
 夫婦の力で妊娠したい。それは患者さんご夫婦の希望でもあり、その原因が女性側の卵管因子や子宮内膜のケースなどであれば、それを腹腔鏡で診て、治療に選択肢を持たせるのも必要なことと考えています。
 ただ、そこにも年齢と卵子の質は関係していて、若ければ結果も良く、年齢とともに厳しくなることに変わりはありません。

 

医療で大切なこと

 医療を行うということは、当然患者さんの希望があるわけですから、それに応えなければなりません。腹腔鏡もその1つ。また、希望に応えるのにもできるだけのメリットを考え、不妊治療で体外受精を行うのにも、できるだけ多くの時間対応できるよう、夜間でも注射ができるとか、処置に当たれ、治療費用も安いのに限ります。個人医にとってはその医療費用のサービス努力も大切です。そして、当院であれば年間3500以上の治療周期を診て、それを続けていれば傾向もつかめてきます。そこでやはり卵子の質に関しては年齢が大きく関係しているので、適齢期での妊娠を啓発、推進されるよう願うばかりです。 

 

やはり、卵子の質までは変えられないということですね

 ここまで患者さんの年齢が上がってくると、チャンスも少なくなる一方ですから、卵子の質を守るために何か工夫できることはないかと考え、それが栄養とか、運動とか、漢方やサプリといったものに救いを求める気持ちにもなりますが、その辺はどうなのでしょう?

 それで効果があるかどうかはわかりませんが、個人個人の心がけで、それこそ喫煙とか、アルコールとかも、注意をすることもないくらい、みなさん悪いと言われていることに関してはやめていらっしゃる方が多いので、ふだんの生活で十分カラダの健康は保てていると思います。
 ですから、栄養とか、運動とか、漢方とかサプリとかがいいということに関してもわかりません。個人差、太り過ぎや痩せの問題もあるでしょうし。それ以上に質を細胞面から考えるのであれば、核置換とか、細胞レベルの話になりますが、それは問題も多く、許されているものではありません。
 その話の将来ということであれば、研究をされている先生方や研究者に聞くのがよいと思います。


培養室での努力はどうですか?

 質を落とさないための工夫や努力は、当然、培養士たちが行っています。最近は、培養液や機器の進歩も進んでいるため、その辺での治療施設間格差はなくなってきているのではないでしょうか。

 

 先生のところには、産科もありますが…

 出産まで診るということでの意義も大きいのではないでしょうか?

 それも大切なことですが、生殖医療を真剣に考えたらそれとこれは別に考え、生殖医療をどのようにしっかりおこなっていくかが基本となります。ですからその気持ちはしっかり持ち続けていきたいと思っています。

 

杉山産婦人科 杉山力一院長のお話
(2015年3月5日発行 『i-wish ママになりたい 女性のカラダと卵子の話』の記事です )