がんばりすぎですよ!

公開日: 2017-06-22
嘉奈子先生、妊娠しやすいからだづくりで何か良い方法を教えてください!
今号のテーマ「妊娠しやすいからだづくり」について、何か患者さんのためにアドバイスとなることはないか、はなおかIVFクリニック品川の花岡嘉奈子先生にお話をうかがいました。
妊娠しやすいからだづくりにかける時間や労力ってどうなのでしょう?
妊娠しやすいからだづくりについては、あまり気にしなくても大丈夫。
不妊治療をしていると、妊娠するために「○○した方がいい」とか「△△はよくない」と、何かと○×探しになりがちです。それが高じて「○○しなければならない」「△△してはいけない」と気にし始め、体も心もがんじがらめになってしまうことってありませんか。
不妊治療を受ける。
体外受精に挑戦する。
だからこそ、自分でも何かできることはないかと探して、だんだんとのめり込んでしまうのかもしれませんね。
でも、治療時に「しなければならない」なんてことは、そう多くはないのです。
ですから、あまり気にしなくても大丈夫。
治療を受けるうえでの「妊娠しやすいからだづくり」は、信頼できる医師選びから
まずは、主治医との信頼関係を築くことが、何よりも『妊娠しやすいからだづくり』につながっていくのだと思います。それには、
「この先生なら任せられる」「この先生なら信用できる」
と思える医師と出会うことが重要です。
食生活や運動などの生活習慣を改善することに労力をかけても、そこに成果が現れているのかどうかを確認したり、実感したりするのには難しい面があります。何かをしたからといって、その成果が治療の結果に結びつくとは限りません。
治療そのものが気持ちよく受けられるか、まずはそれがベースです。
ですから、不妊治療を受けるうえで「妊娠しやすいからだづくり」のために何か良いことをあげてと言われたら、私は、「人を見る目を養うこと」「医師を見る目を養うこと」とお答えしたいですね。
では、医師を見る目を養うためにはどうしたらよいのでしょう?
医師を見る目を養うためには、その医師と十分に話をしてみることです。たとえば病院選びのきっかけが、ホームページに記載された妊娠率だとします。でも、その妊娠率に左右されずに、医師にたくさんの質問をして、納得のいく返事をもらえたら通院を決め、そこで納得がいかなければ、他を考えてもいいと思います。
次々と転院するドクターショッピングはよくないという方もいますが、話をして「あれ?」と思う部分があったら、他をあたってみてもいいのではないでしょうか。
治療が進んだ段階で「最初はいい先生かな?」 と思っていたのに「あれ、違ったかな?」となることもあるかもしれません。患者さんも、治療が進めば自分でいろいろと勉強をされて、専門的な質問も出るようになります。それに対して口を濁すような医師では、治療にも不安や疑問を持つようになるでしょう。
また、患者さんの生活スタイルへの配慮、仕事と両立している場合の考慮も大切です。例えば、どうしても仕事の都合がつかなかったり、やむを得えない残業が入ったりした場合に、「言う通りにできないのなら、もう知らないよ」という態度を見せてしまう医師です。
患者さんの生活の中に、仕事も治療もあることをしっかり理解して、それを守りながら治療効果を出す医師が理想
もちろん、卵胞の成長やホルモン値の変化など、患者さんの都合や、スケジュール通りにはなりません。ですから、治療スケジュールを変更しないようにすることが基本です。ただ、患者さんにとって、生活の一部に治療があるのだと考えています。生活のすべてを成り立たせるためには仕事も必要なもの。
その患者さんの生活背景を考えれば「決められた時間に注射に来られないなら、知らないよ!」とは、簡単には言えません。そのために患者さんたちは、どこかで無理をし、仕事に都合をつけ、何とかするかもしれませんが、でもそれは逆に、病院の都合かもしれません。実際、ある程度は、患者さんの都合に合わせて注射の時間を変更することはできるはずです。そうした配慮ができるか、それら方法を知っているか、アイデアを持っているかどうか、それが治療技術の差となって患者さんにも影響していきます。
治療プログラムのすべてを患者さんの都合に合わせることはできなくても、柔軟に対応できるところは考慮することが、医師選びの面からも重要なことでしょう。
そして、それは患者さんの年齢層が高くなってくるにしたがって、より重要になってきます。30代から42歳くらいまでであれば、おそらくどこの病院で治療をしても、結果に大きな差はないでしょう。でも40歳を超え、42歳くらいからは特に、治療方法や技術、対応の柔軟さがより必要になってきます。それだけ、治療予測が難しい年齢になってくるからです。
妊娠するため、そしてママになるための治療ですから、是非、その目を養って、医師選びをし、できるだけ無理の無い不妊治療を受けてほしいと思います。
タバコだけは、絶対にダメですよ!
「妊娠しやすいからだづくり」のために、タバコだけは絶対にダメです。タバコは、卵子にも精子にもよくありません。タバコを吸っている人だけでなく、その副流煙でも影響を受けるためパートナーの卵子、または精子にも悪影響を与えてしまいます。妊娠して、出産するために治療をしているのに、タバコによって、それらが遠ざかってしまうのです。
タバコを吸っているご主人が、タバコをやめると、精液検査に驚くほどの違いが出ることもあります。精子数が増えたり、運動率が良くなったりするケースが本当に多いのです。タバコは、子どもの成長にも影響しますから、とにかく1日でも早くやめてほしいと思います。
ただ、タバコをやめることは、大変かもしれません。
そこで、ちょっと計算してみましょう。例えば、2日で1箱吸っていたとします。すると1年間で183箱のタバコを吸っていることになります。これを1箱400円で計算すると、7万3200円。20歳から吸い始め、今年で40歳なら20年間で146万4000円がタバコ代で消えたわけです。1日2箱だったら300万円近くになります。そのうえ健康被害があり、周囲にも迷惑をかけ、妊娠を遠ざける要因にもなっています。「やめましょうよ」と言うしかありませんよね。
また、カップ麺もよくありません。塩分も多く、体が脱水状態になりやすいことや発泡スチロールの容器からは、環境ホルモンが溶け出すとも言われています。
お話しましょうそして、笑いましょう
やはり話は元に戻ってしまいますが、医師と十分にコミュニケーションをとることが大切だと思います。そして、笑うことも大切です。
転院してくる方の中には、これまでの治療で打ちひしがれてくる方もいます。40歳以上になれば、妊娠しないで治療を終える方も多くなってきます。そのため、妊娠と出産をしっかり理解して納得して治療をしていただくために、私は患者さんとたくさんのお話をしたいと思っています。
何度診察にみえても、笑顔の出ない方もいますが、それだけ気を張っているのだな。打ちひしがれているのだな。と感じています。でも、話をしているうちに何かのきっかけで笑顔になったり、笑い声が出たりすると、私も嬉しくなり、思わず「笑ったね」と言うと「笑い方を忘れていました」と答える方もいます。
それだけ思いつめていたのですね。
楽しく、美味しく妊娠しやすいからだづくり
さて、妊娠しやすいからだづくりのためには、医師を見る目を養うことだとお話してきました。ただ、そうは言っても、日常的な何か? を求める患者さんの声が後を絶ちません。そこで、いくつかのポイントをメモとしてまとめました。
メモに挙げたことの実行は「楽しみながら行う」ことが大事です。「しなければならない」という使命感や義務感にならないように。運動や食事などについて考えること自体が心のリフレッシュ、からだのリフレッシュになればいいのです。
楽しく運動する。楽しく食事を作る。そして、美味しく食べる。「あ~、すっきりした!」「あ~、美味しかった!」とその時間を過ごして楽しかったという思いを少しずつ積み上げるようにして、たくさんの楽しいが詰まったからだになればいいなと思っています。
わたしができること
患者さんにとって、診療を受ける時間も、できるだけ楽しい時間であればいいなと思います。先生に会って、話ができてよかったと思ってもらえるのも、治療の大切な要素
だと思っているからです。
患者さんたちには、“がんばれ、がんばれ”と常に思っています。もちろんみなさん頑張っていますし、頑張りすぎはよくありませんが、「がんばれ」って、心からの応援なのです。
ただ、すべての人が子どもを授かれるわけではないので、60歳になっても、70歳になっても明るく生活できるような声かけを心がけながら、診療をしていきたいと思っています。
はなおかIVFクリニック品川 花岡嘉奈子院長のお話
(2015年9月20日発行『i-wish ママになりたい 妊娠しやすいからだづくり2015』の記事です)