伝えたい、卵子の大切さ

公開日: 2017-06-14
はなおかIVFクリニック品川 花岡正智院長のお話
『i-wish ママになりたい 女性のカラダと卵子の話』より
日々、新しい精子を造り出している男性。
そして、数に限りある卵子を育む女性。
私は同じ産婦人科医の先輩と結婚をして、子どもを儲けることができました。でも不思議なものです。実は2人目不妊で、私たち夫婦も生殖医療の恩恵に預かっています。その方法は体外受精でも顕微鏡下で一つの精子を卵子に直接注入する顕微授精というものでした。妻の年齢が高かったことが原因かもしれません。
卵子の質は年齢を重ねるにつれ劣化して、質の良い卵子に出会うチャンスが減ってくるのです。
私たち夫婦は運良く子どもを授かることができましたが、同時に自分が受けた学校教育のことを思い出したものです。〝卵子が減る〟なんてこと、教わったのだろうか? と。 何となく歳を取れば女性が妊娠できなくなることのイメージは身に付いていたものの、学校では避妊の教育と女性には月経があることくらいの教えだったと記憶します。
それが今になって、『なんで卵子の大切さを教えないの!?』と、生殖医療に携わりながら思っています。患者さんによっては、治療をはじめるのが『遅すぎる!』と悔やむことも多いのです。
それに比べ、男性の精子は日々造られ続け、造精能力が衰えはするものの、その機能は歳をとっても持続されます。
でも、女性の卵子は、そうはいきません。それだけに、女性はカラダも卵子も大切にしないといけない現実があるのです。
女性の年齢と大切な卵子の質
学校教育にもなく、社会での教育機会も無いのですから、一般女性にとって、月経があることを実感していたとしても、月経周期に起きているホルモンの流れや、生殖機能で何が起きているのか、また、卵子がどのようにできて、排卵されていくのか、また、その生涯がどうであるかということを実生活の中でとらえることは難しいかもしれません。
そして、それが妊娠にどう関係しているのか、その知識が不十分なのが現状です。したがって、当然、患者さんはご夫婦でよくわかっていない方がほとんどなのです。
妊娠を望む夫婦にとって、卵子の質は結果を左右する大事なものです。この卵子の質が年齢とともに低下し、数も少なくなっていけば、治療でも卵子の質と数との戦いということになってきます。
年齢からすれば、20歳前後から35歳くらいが妊娠適齢期。それを超える頃から質の低下や残数の心配が始まり、43歳以降はかなり厳しく、治療を諦める現実もやってきます。
治療とともに感じる現状から、
卵子のことを知ってほしいと願う気持ち
もちろん、不妊の原因すべてが卵子の質の良し悪しということではありません。検査をすることで、自分のどこに原因があるのか、卵管や子宮のどこに問題があるのか、精子を受け入れない特別な抗体があるのか、それとも男性側に原因があるのか、それによってタイミング療法や人工授精、体外受精、顕微授精と必要な治療も違ってきます。
ただ、どの治療方法であっても、主役は卵子です。
妊娠できた時には『卵に生命力があったのですね!』という思いです。
この素晴らしきもデリケートな卵子
"ようこそ卵子さん"
今、私は1冊の本を作っています。
読んでいただければ、妊娠に向けて自分のカラダの中で何が起きているのかが理解しやすくなると思います。また広い年齢層の方に対しては、人生の中でもっと豊かな選択肢が実現するヒントになるかもしれません。そうすれば後悔も少なくなるかもしれませんから…。
そこで、受精のときを考えてみてください。男性の精子の役目は、卵子が開花する引き金のようなものです。自然妊娠でも、1つの卵子に数百個の精子が群がって、卵子の殻を酵素で溶かしながら挑み、たった1個の精子だけが卵子の中に進入することができます。そして精子を迎え入れた卵子は受精卵となって分割が始まり、妊娠への道を目指します。
不妊治療を受けられる方にとっても(夫婦生活の中で)自然に妊娠される方にとっても、妊娠の成立はそこに向かって歩み出す卵子があるからこそです。
この素晴らしきもデリケートな卵子のおかげで、人は命を受け継いできているのです。
ですから、しっかり妊娠につながるよう "ようこそ" と、ひとつ一つの卵子を大切に思い治療をしていきます。
この大切な卵子や妊娠に対する知識を、女性には早い時期から正しく持って欲しいと思いますし、男性には、これだけ大切な卵子を持つ女性のカラダを労って欲しいと思います。
医師である私から、みなさんにお伝えしたい、そのための優しい本を作り始めました。
あなたのカラダが大切!
治療の前に整えましょう
卵子の質を考えれば、あなたのカラダの健康が大切になります
今あるあなたは、遠い遠い過去から受け継がれてきた命です。それが今の時代にあって、普通に生活をしている限り、栄養が足りないとか、ホルモンに偏りが出るということは少ないでしょう。
不妊症では血液検査でホルモン値や感染症の有無、また、内膜症や卵管通過検査、AMH検査なども治療計画に必要となります。
日常生活では、もちろんタバコはよくありません。タバコは卵が順調に発育しなかったり、受精や着床環境、妊娠経過にも悪影響を及ぼします。
男性なら精子の数量減少や運動率の悪化、奇形も多くなるなどの結果に結びつくといわれています。
その他、カラダのバランスが崩れていれば、その修復が不妊治療よりも優先されることもあるでしょう。
体重管理も重要です。BMI値で30以上と太り過ぎの方は、適正体重にすることが必要です。痩せの場合も適正に! 原因が過剰なダイエットであれば、改めて栄養を考えてみましょう。
細胞の元気
私たちのカラダは細胞でできています。もともとは1つの卵子と1つの精子が受精し、分割・分化して色々な機能を持つ臓器や器官ができたものです。
人のカラダの細胞は、一定サイクルで生まれ変わると言われていますが、心臓や目、脳、脊髄などを構成する細胞のように、増えずにその役目を果たし続けるものもあります。それら機能がしっかり役目を果たせるよう、栄養を補充していくのにも細胞が活躍しています。
卵子も増えることはありません。そしてだんだんとその数が減っていきます。尽きるのは人生の半ば、あなたが閉経を迎える50歳前後のその10年ほど前です。
年齢とともに衰えていくのは止められません。
でも、元気を送り続け、カラダを整えていることで、その衰えを食い止めたり、妊娠していく環境に少しでもプラスになると考えます。
患者さんへ
子どもがなかなかできないで心配しているのなら、早めにぜひ専門の病院、クリニックにお越しください。私たちの仕事は、子どもが欲しい人のためにあります。大切な卵子のためにも、ぜひお早めに!
はなおかIVFクリニック品川 花岡正智院長のお話
(2015年3月5日発行 『i-wish ママになりたい 女性のカラダと卵子の話』の記事です )