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はじめに
2009年、高度生殖補助医療ショック!とも言える「胚(受精卵)の取り違え事故」が発生してしまいました。年間の体外受精実施件数が16万件と増えて世界第1位となる日本。このような事故の話題を含め、報じられるニュースによっては、この医療が本当に安心で安全に受けられるものかどうかの心配や、モラルはどうなっているの?との懸念も生じ、結果、『どこで受けても質の高い医療であるように』と誰しも思い願うことでしょう。
そして、治療する医療施設でも、まだ歴史の浅い分野での診療需要に現場レベルでの悪戦苦闘もあることでしょう。
しかし、その実態にはなかなか分かり辛い面があります。
それは、妊娠成立の複雑なメカニズムや加齢による卵子の質の低下、夫婦それぞれの事情や治療施設それぞれの質の問題などが絡んでくるからです。
行政による助成金も支給される中、今後も高度生殖補助医療(ART: assisted reproductive technology )が健全に発展を遂げるよう、新たな基準づくりや法整備も課題となっている今、当センター(※)でも提供できる限りの特別なガイド制作を進め普及に尽力しています。
その2009年度版が本書です。 |
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本書の制作背景>>>

不妊治療の情報を扱う中、今のARTの状況をしっかり皆様に知って欲しいとの気持ちから、2003年当時、紹介には何が必要かを当センター内部で検討しあったのがきっかけです。
当初から話題にのぼっていたこととして『安心・安全』、『不妊治療の現状』、『培養室の実状』、『スタッフの患者への対応のあり方』、『看護面・心のケア』、『患者の意識・知識』などがあり、その細かくを見ていった時に沢山の課題が生じて、その調査とともに結果を刊行物(i-wishママになりたい など)に取上げて広く配付までを行なう活動をしてまいりました。
その間にも新たな不安や心配が生じ、その一つが情報を伝える側にとっての問題でした。
中でも、不妊治療の病院(治療施設)ランキングや妊娠率データを掲載するものの中には、曖昧な基準で読者に正確さが伝わりきれないものや誇大とも思われる情報を流す病院(治療施設)、逆に公開不足も問題になっていました。その他では、あまりにもビジネス化した病院側の診療方針も気になるところです。
非配偶者間の生殖医療に関しての対応については別問題として考えたいのですが、法整備のないまま独自に実行している施設(医師)もあれば、基準を決めかねている学会や国(厚生労働省)の現状もあります。
それらは、やはり本来の夫婦間で行なわれるべきARTではなく、例外的なARTの話ですし、治療に紛らわしさを生む妊娠率の話にしても、治療があっての結果ですから、まずは純粋にARTを行なう上での大切が集約された基準や情報があって、その告知がなされることが本来の責務かと私たちは常々考えていました。

ここに掲載ある施設の品質は?>>>

本書の構成は、関連学会情報、フォーマット化した完全ガイドでの施設情報、そしてクリニックの現状を抜粋して紹介したページ、全国のART実施施設リスト(10項目表示)で構成されています。
完全ガイドのコーナーに参加された施設の信頼性は、ここまでの情報を提示でき、公開できるという診療姿勢からもトップクラスあるいは信頼できる施設と考えます。
施設の評価を規模や実施件数でみる人もいるかもしれません。しかし、基本は人(医療者)が人(治療を必要とする受療者)の生殖を、子どもが欲しいという願いにより手を施すわけですから、そこに親身になって適切な技術と設備環境で、的確にその治療を行なっているのであれば、それが十分な評価なのです。

幸せな顔がある>>>

治療施設では、『子どもができた時』の患者さんの幸せな顔があります。無事出産してのさらなる幸せな顔があります。
『子どもが欲しい』願いに、できるだけのことをしてきた夫婦の満足感もあることでしょう。
それが正当に得られていることが、体外受精の品質の証ともいえるでしょう。そして、実際に年間2万人ともいわれるお子さんがARTで誕生しているのです。臨んだ数が16万件としても、一昔前の治療がない時代から比べれば立派なものではないでしょうか。
どうして事故は起きるのか?
ところが、治療施設には様々なところがあります。分娩を扱っているところ、不妊治療のみの専門的なところ、開業医の施設、公立の施設、大学病院や総合病院など。
そこでのスタッフのあり方も様々です。
忙しさや対応患者数もまちまちで、診療スタイルにも違いがあります。
そこで、必要になるのが基準です。
その基準が、日本では曖昧なのです。
先に起きた移植胚の取り違え事故(※2/p8)での、日本産科婦人科学会会見の最終発言は、確かダブルチェックでの注意と移植胚数の厳守の2点に集約されていたと記憶していますが、これではきっと多くの治療施設で、『当たり前』だし、『他人事ではない』と思われたに違いありません。
人が行なうことだからミスも起こる、ということを前提に、だから何が必要かを考えていくことが大事なのでしょう。
ここでも取り決めごとなど、基準不足と法規制の遅れが焦点となってきます。
本来は、その整備のためにも諸学会や行政窓口等が位置しています。
とりわけ、移植胚の取り違え事故が県立という公立病院で起きていることには大きな意味と反省があるはずです。ドクターの注意不足はもちろんですが、培養室での作業をドクターが1人で行なっていたという労働環境も問題視されているところです。
やはり、起きてしまったことへの対応が、今一度しっかり反省されて対処されるべき事故であったと考えますが、そこから見えてくる現実的な課題としても、全国規模での医師やスタッフの環境、資質、つまりは施設のクオリティ問題がつながっているのです。
したがって、それら施設基準と明確な施設情報が必要とされる時が今なのです。

この本の構成>>>

学会紹介
本書で実際に取材し、紹介した学会は、
1、日本生殖医学会
2、日本哺乳動物卵子学会
3、日本受精着床学会
4、日本IVF学会
5、日本臨床エンブリオロジスト学会
です。
それぞれ、理事長への直接インタビューを行なって色々と話をしましたが、掲載自体はそれぞれに同様のテーマで行ないました。
治療施設、完全ガイドページ
完全ガイドのページでは、所在地や電話番号、WEBのURL、医師のプロフィールほか、メッセージなどの一般的な紹介に続き、1部で治療実数ほか各種データ、2部で7つのステージを設けました。
それぞれ、
ステージ1●治療をはじめる皆様へ
ステージ2●誘発方法と薬剤について
ステージ3●採精について
ステージ4●採卵について
ステージ5●培養室について
ステージ6●胚移植について
ステージ7●妊娠について
各ステージには、アイコンをともなった多項目の診療に関する案内があります。
加えて関連する企業の紹介をしてみましたが、今後はさらなる紹介強化が望まれます。
実際のクリニックの様子
いくつかのクリニックの現実的な表情を追った紹介があります。それぞれにテーマが違うので、それらを見ていけば、治療施設の総合的な様子が分かるかと思います。
それを是非、治療の参考にご覧ください。
現場がきっと見えてくることでしょう。
1、治療の様子がビジュアルでよく分かる
2、腹腔鏡で質の高さを誇る治療施設
3、卵子の質についての情報を発信する医師
4、頑張り続けるクリニックの表情
5、遠距離での治療についての情報
6、学会を担当する医師の様子
7、習慣流産と不妊治療
お伝えしたい話題、クリニックはまだまだ沢山あるのですが、治療の実際はART施設の現場で、実際の治療を通してその価値を直接感じとっていただくしかありません。
本書はそのためのガイダンスです。
全国ART実施施設ガイダンス
全国のART実施施設の紹介を10項目の診療内容表示で紹介しました。ここで紹介する施設は、当センター(不妊治療情報センター・funin.info)ホームページリストとの連動で、日本産科婦人科学会の登録施設を網羅し、さらに新規クリニックや登録予定施設を若干含んでいます。
また、登録施設でも実際に診療が行なわれていないなどの施設では、掲載がなかったり、表示に工夫がある場合があります。
学会登録には、体外受精、顕微授精、凍結設備などが必要となりますが、本ガイドでは、人工授精、男性不妊、カウンセリング、漢方、運動指導、食事指導、女性医師の項目を追加して設けてありますので、クリニックの特徴もさらに参考としていただけることでしょう。

(※ 不妊治療情報センター・funin.info の紹介)

2002年、産婦人科窓口配付の啓発誌から不妊専門の情報を独立させて扱うために誕生したのが『不妊治療情報センター・funin.info』です。書籍媒体『funin.info』、webサイト『http://www.funin.info』の両媒体でスタート。その後、書籍は『i-wishママになりたい』シリーズへ進展。専門医と連動した書籍づくりやホームページづくりも手がけ、当初より啓発意識の高い方針と配付形式で生殖医療の情報を提供しています。

チーフ/谷高哲也 記

本書に先がけて行なった2008体外受精特別アンケート●10項目、60以上の内容からなるものです。


アンケートで得た現状の発表は>>>i-wishママになりたい 『体外受精の現状』号に特集掲載!

●ご協力いただきました各位に深くお礼申し上げます
※回答施設のデータは回答各位が閲覧できるようデータベース化しております。
