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取材記事

早めに対処すれば 解決策はある

公開日: 2017-07-10

まずは今の自分の生殖機能について知ること
ホルモン値や子宮・卵巣の状態をチェックすることをお勧めします。 

 最近では、卵子凍結を行うために遠方から通ってくる患者さんも多いというオーク会の各クリニック。医療の進歩とともに、不妊にはさまざまな治療が可能になってきている面もありますが、年齢を重ねて質の低下した卵子を若返らせることはできません。また、倫理的な問題が感じられたり無理な治療というのもいけません。
 だからこそ、自分の状態を正しく知り、必要なら早めに対処することが大切です。
 不妊治療にたずさわりながらその思いを告げる苅田医師にお話をうかがいました。

 

 

加齢に伴い、卵子の質を気にかける傾向が…

編集■卵子の質を気にされる患者さんは多いですか?

苅田■年齢が35歳以上の方は加齢とともに卵子の質が悪くなると気にされていることが多いと感じます。
 そのため現在パートナーがいなくても将来に備えて卵子を凍結しておきたいと来院される方もいます。
 逆にまだ若い方の場合は、卵子の質よりも、ちゃんと排卵しているかが気になるようです。

編集■確かに卵子の質の低下は不妊の一因と言われますが、原因は他にもありますよね。それは、いつどのように患者さんに伝え、また調べたりするのですか?

苅田■来院後、最初はホルモン検査や超音波検査などをして、きちんと排卵しているか、また子宮卵管造影検査で卵管が詰まっていないかなどをチェックしていきます。他に男性因子も絡んできますし、それらを総合的に確認してお伝えしています。 

 

卵巣の状態を示す
FSHとAMHを調べる

編集■卵子の質の低下が疑われるのは、どのような場合ですか?

苅田■通常、月経5日目までにホルモン検査をするのですが、そのなかで卵巣の状態を示すFSH(卵胞刺激ホルモン)の値が高い方で、特に2ケタ以上ある方の場合は卵巣の機能が低下していると考えられますから、AMHの数値も調べることを勧めています。
 30代後半の方については、1回の採血でできますからホルモン検査と一緒にAMHの検査もいかがですか?とお話するようにしています。

 

卵子が老化するワケ

編集■卵子の質が低下する原因については、どのように伝えていますか?
苅田■卵子について説明するためには、胎児の頃にさかのぼって説明をする必要があります。つまり卵子は胎児の頃に造られ20週頃にピークを迎え、その後、数はどんどん減っていきます。残っている卵子は年齢と一緒に年を重ねていくことになります。そのため卵子は時間とともに老化して、質が低下してしまいます。
 私たちの寿命は80歳くらいですが、卵子の寿命は50歳ほどが限界。そこが日々造られる男性の精子とは違う点で、だからこそ卵子の質が妊娠に及ぼす影響は大きいとお伝えしています。

 

卵子の老化と言われても
なかなか完全には納得できないものです

編集■説明を聞いた患者さんはどのような反応を示しますか?
苅田■不妊治療をしても、なかなか妊娠にいたらない患者さんの場合、特に30歳代から40歳代の患者さんは、卵子の老化が原因の1つであることは頭では理解できていても、それ以外にも何か原因があって妊娠しないのではと考えておられる方が多いと感じます。
 特に体外受精の場合は、採卵
して受精後、5日目まで培養した胚盤胞を移植することが多いのですが、胚盤胞まで到達しているのに妊娠しないのは、なぜですかという質問をされることが多いです。
 一方、培養の段階で卵子の質を向上させる方法はないのかと質問される患者さんもいます。やはり、卵子の老化が大きな原因となっていると言われても完全に納得できるものではないのでしょうね。

 

基礎体温が2相に分かれていれば
大丈夫?

編集■ご自分のからだの状態について、患者さん自身はどこまで理解しているのでしょう?
苅田■来院される方のほとんどは基礎体温をつけています。ただ、基礎体温が低温期と高温期の2相に分かれていれば大丈夫だと思っている方が多いと感じます。
 確かに基礎体温は参考にはなるのですが、実際、どの時点で排卵しているか、卵胞がきちんと大きくなっているかについてはエコーで確認しないとわかりません。
 最近は、スマホのアプリで排卵日などを示してくれるものを使っている方もいますが、たとえばホルモン値などが卵胞の発育や排卵に深く関係しているというところまで理解している方はあまりいらっしゃいません。クリニックに来てホルモン検査をして初めて自分の状態を知る方が多いと感じます。

 

 

卵子の質を今より悪くしないことが大事

編集■では、何らかの方法で卵子の質を上げることはできるのでしょうか?

苅田■卵子の質をよくすることは難しいので、質を維持する、今以上にクォリティを下げないことが重要です。
 他に対策として考えられるのは、卵子が減数分裂を再開する時期(排卵直前~受精まで)の体内環境をよくすることです。卵子の染色体異常が起きるのは減数分裂を再開するときなので、その時期の環境を整えるのも、ひとつの方法だと思います。
 あとはサプリメントや漢方をお勧めすることもあります。DHEAは、卵子が採れにくかった方でも採れるようになったり、採卵数が増えたというデータが報告されています。他にコエンザイムQ10、ビタミンE、亜鉛、マカなどを飲まれている方もいます。
 漢方は当帰芍薬散や加味逍遥散、温経湯など、その方の状態にあったものを処方しています。当院でも実際、温経湯を飲まれて卵子の採れる数が増えた患者さんがいらっしゃいます。もちろん、どなたにでも変化が見られるわけではなく、薬が合った場合に改善が期待できるようです。

 

検査で自分の状態をチェックする

編集■卵子の質ということも含め、患者さんにお伝えしたいことは?

苅田■女性の社会進出が進んで、高齢出産も増えていますが、すべての方が妊娠できるわけではありません。クリニックに行ったら妊娠できると思っている方もいらっしゃいますが、100%妊娠するわけではありません。
 ですから、一度クリニックで検査をしてみる。まずはご自分のホルモンの値や卵子の状態を確認しておくといいでしょう。何か問題があったにしても早い段階であれば対処する方法はありますからね。
 産婦人科に足を運びにくいという気持ちはよくわかりますが、当院には女性のドクターも多く在籍しておりますので、いろいろ聞いていただければと思います。
 検査は採血によるホルモン検査と、子宮や卵巣などに異常がないかを確認する超音波検査が基本です。月経の終わりかけが検査に適した時期です。現在は卵子凍結という方法もありますので、まずは自分の生殖機能をチェックしてみてはいかがでしょうか。

 

オーク住吉産婦人科 苅田正子先生のお話
(2015年3月5日発行 『i-wish ママになりたい 女性のカラダと卵子の話』の記事です )